私は金魚
ぷかぷかと水の中を漂っていた。
周りには、煌びやかな色を見に纏った熱帯魚が軽やかに泳ぎまわっている。
けれど、金魚すくいですくった一匹の赤い名も知れぬ金魚は、それはそれは居づらそうに、水底で浮いたり沈んだり、影に隠れてみたり。
金魚は熱帯魚に迫害されていた。
「君みたいな低俗な輩は、この美しい水槽に居るべきではないんだよ。とっとと出て行ってくれ」
熱帯魚の群集に、金魚はそう冷たい言葉を吐きかけられる。
金魚はその言葉を重く受け止めながらも、出口のない水槽を漂うこと以外に何もできず、澄んだ水をなるべく汚さぬよう、またひっそりと泳ぎまわっていた。
「いったい、僕はどうしてこんなところに居るんだろう。早くここから逃げてしまいたい。でも出口は遠くて、跳ね上がっても干からびてしまうだけなんだ」
水槽をみつめながら、私はそんな妄想をした。
たった一匹の醜い金魚はきっとそんな風に感じているんじゃないかって。
私がそうだから。
ひとりぼっちの醜い金魚。
それは私。
肌の色も、瞳の色も、顔立ちも、背格好も。
全てが普通とは違う、劣った人種である私。
金魚が水底をぷかぷかと漂っている。
流れに身を任せて。頭上では、熱帯魚達が楽しげに泳ぎ回り、水に流れを起こしていた。
ポンプからは新鮮な空気が流れ込んでくる。熱帯魚にとっては当たり前の空気。
でも金魚の私にとって、その空気は清純すぎる毒物だった。
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