刺激的炭酸デイズ
3秒ルール?いいえ、洗えば大丈夫
「お見舞いはメロンだろ?」
歯がキラッと光るようなさわやかな笑顔で病室に入ってくる少年。服装は病院には着てきてはいけない黒のスーツである。片手に持っていたメロンをベットに並んである机に置くと、近くのイスを引っ張り出して、ドスンッとなんの遠慮もなく座り込んだ。
「・・・お前にメロンを買う金なんてあったのか?信じられないんですけど」
「ふふふ・・・これはとあるところから貰ってきたものなんだ」
だるそうに起き上がった病人の相模海斗(さがみかいと)は、不機嫌そうに少年を見る。海斗は皺くちゃの水色のパジャマを軽く直すと、机にあるメロンを手に取った。
「まさか、店からパクッてきたのか・・・?」
「いんや。ちょっくら葬式に忍び込んで、放置してあったフルーツの詰め合わせをいただいたのさ」
「縁起悪ッ!!んなもん見舞いに持ってくるなよ!!」
「え〜。だって見舞い品といえばメロンなんだろ〜?」
海斗が投げたメロンをやすやすと受け取り、ブーブーと唇を尖らす。少年の名前は三上廉太(みかみれんた)。外見年齢は小学生だが、これでも正真正銘、高校生である。
「だいたい、俺がこうなったのは誰のせいだと思ってるんだよ」
「俺、三上廉太で〜す」
「そうだ!!二人乗りだってのに、お前が調子にのってチャリで下り坂を爆走したからだ!!しかも二人で吹っ飛んだのになんでお前は無傷なんだよ!」
包帯でぐるぐる巻きにされた左足を指し、海斗は怒鳴る。だが加害者の廉太はケラケラと笑うだけで。そんな態度にさらに怒った海斗はフンッとそっぽを向く。
「まぁまぁ、そんな怒るなって。メロンでも食べて気を抑えろよな」
「誰が怒らせてんだよ!!!!」
どこからか取り出した包丁でメロンをばっさり二つに切る。パカッと割れたメロンは皮と同じ緑色ではなく、キレイなオレンジ色だった。それを見て、廉太は顔を歪める。
「なんだよ、コレ。腐ってるじゃんか。やっぱ葬式場に放置されてるもんなんて持ってくるんじゃなかったな。バナナはキレイだったから何日も経ってないと思ったんだけど・・・」
「お前はバカか!!これは夕張メロンっていって、マスクメロンと違って中はオレンジ色なんだよ!!そんなのも知らないのか!?」
「俺ってば高級なもんしか知らないから、格下メロンのことなんてしらないのさ」
「マスクメロンより夕張メロンの方が高いの!!」
お前と話してると疲れる・・・と海斗はこめかみに手をやる。だが我が道を進む廉太はそんなことも気にせず、半分に切ったメロンにがぶりついた。もちろん細かく切っているわけもなく、二つに切ったものに顔を突っ込んで、だ。
「おぉう!!うめー!!ほれ、海斗も食えよ!!」
「種も取ってないのに食えるかっつーの。・・・てかお前、種は?」
「食ったぞ。そのうち腹からメロンの芽が出てくるな」
「そんなこと、あってたまるかよ!!」
ついにぶちぎれた海斗は手元にあった空き缶を廉太に投げつけた。それは見事頭部にクリーンヒット。廉太は倒れはしなかったが、衝撃で手を緩めてしまい、メロンを床に落とした。ベチョッっと音が響き、皮でなく実の部分が床に落ちたことがわかる。
「ノー!!!メロンがっ!!メロンがっ!!海斗の大馬鹿者!!くそぅ。とあえず応急処置だ!!てなわけで俺は今すぐメロンをを洗ってくる!!さらばっ」
廉太は落ちたメロンを両手で大事そうに抱えると、走って病室を出て行った。
「もう二度とくんなっ!!」
病室には憤慨した海斗の声だけが響いていた。
Copyright (c) 2009 Huduki Emihara All rights reserved.
