刺激的炭酸デイズ
お腹が空く番組は見ないが吉
昼休み。生徒たちは思い思いの場所に移動して、昼ごはんを広げる。お母さんが作ってくれたお弁当。お弁当工場のパートおばさんが作ったお弁当。コンビニのパン。昼ごはんの内容は様々だ。
そんな中。窓際にある二席をくっつけて、お弁当を食べる男子生徒たちが居た。
「見事に残り物だよ・・・」
箸を咥え、落ち込んだように呟く男、結城和人(ゆうきかずと)。広げたお弁当の中身は昨日の夜、食卓に並んだものを詰め合わせたものだったのだ。
一方、その隣に座る相模海斗(さがみかいと)のお弁当は、豪華絢爛とまでは言えないが、お弁当のために作りました、といったおかずに混ぜご飯が詰められている。ちなみにこれは海斗自身の手作りである。そんなお弁当を見て、和人はちょっとした隙に海斗の弁当箱に箸を伸ばす。が。
「勝手に食うなっ!」
ばしんっと手を叩かれ、箸は机へ落下。和人は悲しげに箸を拾いなおす。
そんなお昼時の風景。だがいつもとは少し違う。いつもすぐに声を上げる三上廉太(ミカミレンタ)が静かなのだ。食い意地の張りすぎた廉太にとって昼休みという時間は学校生活を耐え凌ぐ唯一の至福の時間であるのだ。それなのに静かなのはなぜだろうか。
「どーしたんだー?廉太?食べないのか?」
和人は、お弁当を開いたまま微動だにしない廉太に声をかける。すると廉太は機械仕掛けの人形のようにぎこぎこと首を動かし、和人へと視線を合わせて、
「スパゲッティー!!!!!!」
その叫びは教室中に響き渡った。廉太はその叫びで力尽きると、ばたりと机の上に倒れてしまう。一瞬、教室中が固まった。すべての視線が廉太に集まるが、いつものことと日常化されている廉太の行動に、クラスメイトたちはすぐに意識を逸らした。
和人と海斗は互いに顔を見合わせ、そして確かめ合うように話し始めた。
「昨日のあれ、見たか?月曜九時のドラマが終わった後にやってるあの番組」
「あぁ。五人組のアイドルグループがコントしたり料理したりするあれだろ」
「そうそう。あれだよ。あれのビストロなんたらっていうコーナーで、昨日・・・」
「オーダーが魚介類のトマトスパゲッティだったな」
「美味しそう、だったよな」
「あぁ。つい親に食べたいとせがむぐらいには、な」
二人は、自分のお弁当をぼそぼそとつつく。視線の先には、茹でられていないスパゲッティと焼き魚、生トマトが投げやりに詰め込まれている弁当があった。とても食べれるものではない。
和人と海斗は、今朝廉太が母親にスパゲッティ、スパゲッティとせがみ、そのしつこさに逆切れする母親を想像し、廉太に取られるまいと弁当を抱えこんだ。
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