刺激的炭酸デイズ

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とあるサラリーマンの休日5





 11月16日  午後12時


「センセー、開けてー!!」
 美術準備室のドアの外から、声が響く。中で一服していた教師は、せっかくの昼休みを邪魔されたことに多少の憤りを感じながら、だるそうにイスから腰を上げてドアまで歩き、ガラリとドアを開けた。
 目の前には、大きな花瓶。美術室の備品で、デッサンなどに使用するものだ。
「あぁ、日直か。入ってそこに置け」
 教師は、今朝とあるクラスの日直に倉庫から使う備品を持ってくるように頼んだことを思い出した。本当なら教師がやるべき仕事だが、たった一人で運ぶには面倒な作業だ。どうせなら二人の日直と自分でやろうと思っていたのだが、倉庫へ行くのなんてすっかり忘れていた。
 たまたまこの日に日直になってしまった不運な生徒は、花瓶を無事に指定した机へと置くと、教師へと向き直った。
「センセー、ひでーよ!!なんで手伝ってくれないんだよ!!」
「すまんすまん、すっかり忘れてた。まだ何個かあるよな?今から手伝うから、な?」
「いーよ。廉太と海斗に手伝ってもらってるから。・・・ほら、来た」
 開けっ放しの扉から、さらに二人の生徒が入ってくる。一人三つずつ持っているから、これで残るはあとひとつだったはずだが。
「センセー、来る途中に一個落としちゃったー!!」
 廉太は、悪びれもせずにそう言った。ひとつずつ慎重に花瓶を机に並べた終えた、海斗はすみません、と廉太の代わりに謝る。
「おいおい、三上・・・・まぁいいか。予備はまだあるだろうしな。んじゃ、お疲れさん」
 教師は、内心なんてことを!と怒鳴りつけたくて仕方がなかったが、自分が仕事を手伝わなかった、というミスがある。頭ごなしには叱れなかった。
 休み時間の終了まであと10分ほど。せめてその時間をゆっくり過ごしたかった教師は、とっとと三人を美術準備室から追い出そうとした。生徒の前で、タバコは吸えまい。
 だが、その希望も叶わず、三人は一枚の絵に見入っていた。
「なぁ、この絵って・・・あの時の・・・だよな?ちょっとあの時とは違うけど」
「絶対そうだよ!なんでここにオジサンの絵があるんだ!?」
「先生、この絵、どうしたんですか?」
 どうやら、三人はこの絵に心当たりがあるようだった。教師は、その事実に驚きながら返答する。
「これは、美術雑誌の絵画コンテストで入賞した絵だ」
「どうして、そんな絵を先生が持ってるんだよ!!」
「この絵を描いたのは、先生の友達なんだよ。あれだけコンテストとか嫌がってたのに、突然、応募して入賞しました、って手紙と一緒に送られてきたんだよ」
 教師は、三人の先にある絵を穏やかに見て、
「いい絵だろう?俺はあいつの絵がすごく好きなんだ」
 そう言った。ずーっと前、この絵の作者に向かって言ったのと同じ気持ちを込めて。
「はい、すごく綺麗です」
 素直に頷く三人。それを見て、教師は思わず口元を緩めた。
「なぁなぁ!今日、帰りに河原行こうぜ!!」
「あの人、居るといいな」
「肉まん買っていく!」

 
 その絵には、河原が描かれている。綺麗な空の下、まっすぐ伸びる道路。色使いが印象的で、写真のようであり、そうでない絵だった。
 道路には、自転車かごにスーパーの袋を入れて走り抜ける主婦や、犬の散歩をする老人など、が描かれている。なかでも印象的なのは。
 高校生ほどの男性の後姿が三つ。仲睦まじく、楽しげに見えるのが不思議な後姿だ。




                             Fin


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